フランク・ミュラー(Franck Muller)のパロディ時計として「フランク三浦」という腕時計があります。ご存じの方も多いかもしれませんが。
実は私も1本持っていて、「埼玉県ご当地モデル」(私、埼玉生まれ、埼玉育ちなもので)というやつなんですが、下の写真を見ていただければわかるとおり、もうネタ以外の何物でもないおもちゃ腕時計です。
とはいえ、単に我々がパロディとして楽んでいる分には「面白いね~」で済むのですが、本家のフランク・ミュラーにとってはブランドイメージは重要。フランク三浦を販売する大阪の会社(株式会社ディンクス)が「フランク三浦」を2012年(平成24年)8月に商標登録したため、フランク・ミュラーはこの商標登録を無効にするように特許庁に審判を請求、これを受けて2015年(平成27年)9月に特許庁はこの商標登録を無効と判断しました。
それに対して株式会社ディンクスも、その無効とした特許庁の判断を取り消すように審決取消訴訟 -審決取消訴訟というのは、特許庁の審決に対して不服がある場合に東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)に対して提起する訴訟のことです- を行い争われていましたが、その判決が昨日下され、フランク・ミュラー側の敗訴となりました。
朝日新聞の記事から引用しますが、
スイスの高級時計「フランク・ミュラー」のパロディー商品名「フランク三浦」を商標登録した大阪市の会社が、この商標を無効とした特許庁の判断を取り消すよう求めた訴訟の判決が12日、知財高裁であった。鶴岡稔彦裁判長は「イメージや外見が大きく違う」として、「三浦」側の勝訴とする判決を言い渡した。
特許庁は、ミュラーの申し立てを受けて昨年9月、「ミュラーへの『ただ乗り』だ」として、登録を取り消した。訴訟でもミュラーは「語感が極めて似ている」「信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」などと主張した。
だが判決は、「呼称は似ているが、外観で明確に区別できる」と指摘。「多くが100万円を超える高級腕時計と、4千~6千円程度の低価格商品の『三浦』を混同するとは到底考えられない」と述べた。
フランク・ミュラーが敗訴したことで、「フランク三浦」という商標登録は有効と認められたことになります(もちろんフランク・ミュラーが最高裁判所に上告すれば別ですが恐らく難しいと思われるため)。
個人的にはフランク・ミュラー側の「(フランク・ミュラーの)信用や顧客吸引力への『ただ乗り』目的だ」という主張はもっともかなと思います。「フランク・ミュラー」というブランドの力があるからこそ「フランク三浦」がパロディとして成立するわけで、フランク・ミュラーが今まで努力して作ってきたブランドイメージにただ乗りされていると憤るのは当然ではないかと。
ですから、フランク三浦も商標登録などせずにお遊びレベルで止めておけばよいのにとも思いますが、とはいえ商標登録しないと、今度はもし無関係な第三者が先に商標登録をしてしまった場合などに問題が発生しますから、商標登録するのも仕方ないというのもわかります。
まぁ、フランク三浦もフランク・ミュラーと混同させてやろうなんて意図が全くないのは明らかなので、うまいこと本家とパロディということで仲良くやってもらえればと思いますが、色々と大人の事情もありますし難しい問題です。