精度だけでいえば機械式腕時計は安価なクォーツ時計に劣るわけですし、ほとんどの人が携帯電話やスマートフォンを持ち、腕時計自体の存在価値自体が薄れていく現在において、数十万~数百万円、場合によっては億単位のお金が必要な高級機械式腕時計を買う意味があるのかと問われれば、「ただ単に時間を知る」という目的に関して言えばないでしょう。
ただし、これを言ってしまうと身もふたもありませんが、高級腕時計に価値を見いだすかどうかについては完全に個人の価値観の問題です。「1000円のクォーツ時計でも時間はわかるじゃないか」というのもその人の価値観ですし、それは否定されるべきものではありません。しかし同時に高級腕時計に価値を見いだす人の価値観もまた尊重されるべきです。
「たかが腕時計に数百万円も出す奴の考えがわからない」などとおっしゃる方がいますが、わからないことは恥ではありません。「自分には理解できない」ということだけ理解したらあとは黙っていればよいのです。
つまらない人間だと思われたくなければ、他人の価値観を無闇に否定するべきではありません。他人の価値観を尊重できてこそ大人です。これは腕時計に限らず世の中のすべてのことに共通することですが。