Frequency Feeling... - 機械式腕時計のファンブログ

私がヴィンテージ セイコー ファイブスポーツ(5 Sports)のコレクションにハマったきっかけ

この記事は「腕時計 Advent Calendar 2016」第15日目の記事です。

このブログでも何回か書いていますが、セイコーが1960年代後半から70年代にかけて精力的に展開していた、主に若い人たちを対象にした廉価な機械式腕時計シリーズ、「セイコー ファイブスポーツ(Seiko 5 Sports)」、およびそのクロノグラフ搭載モデルコレクションである「セイコー ファイブスポーツ スピードタイマー(Seiko 5 Sports Speed Timer)」を個人的にコレクションしていまして、それらをまとめたWebサイトもこのブログとは別に立ち上げたりしています。

以前、上記サイトを紹介する記事内で同じようなことを書いたので、少し内容的にはかぶるのですが、この機会に1960年代後半~70年代に全盛だったファイブスポーツシリーズについてと、私がファイブスポーツのコレクションを始めたきっかけについて簡単にまとめてみたいと思います。

ファイブスポーツとは

セイコー ファイブスポーツ 販売促進パンフレット - 1969年 夏

「セイコー ファイブスポーツ(Seiko 5 Sports)」は1961年に発表された「スポーツマチック(Sportsmatic)」を源流にもちます。

Cal.245 を搭載して発売されたスポーツマチックは、若い人を中心に人気を博しますが、このスポーツマチックに「5(ファイブ)」の称号を冠した「スポーツマチックファイブ(Sportsmatic 5)」が1963年に発表され、これが後のファイブスポーツにつながる、最初の「ファイブ」になります。

デイデイト機能を持った自動巻きの Cal.410 を、3気圧防水のケースに搭載したスポーツマチックファイブですが、この「5(ファイブ)」の由来は、

  1. ダイヤフレックス(切れないゼンマイ)
  2. ダイヤショック(耐震装置)
  3. 自動巻き
  4. デイデイト表示
  5. 防水機能

という5つの特徴を指します。つまり「ファイブ」がつくモデルは、これら要素をすべて兼ね備えているということになります。

その後、Cal.6606 を搭載した2代目スポーツマチックファイブを経て、1969年、Cal.6119 を搭載した「ファイブスポーツ(5 Sports)」、および Cal.6139 を搭載した「ファイブスポーツ スピードタイマー(5 Sports Speed Timer)」が発表されます。

続く翌年、1970年には Cal.6138、および Cal.7017 をはじめとした70系ムーブメントを搭載したファイブスポーツ スピードタイマーが発表され、バリエーションが拡大すると、同時期に起こっていたモータースポーツブームに乗って、爆発的な人気となり、特にクロノグラフ搭載のスピードマスターは、若者の間で大流行になります。

セイコー ファイブスポーツ 販売促進パンフレット - 1969年 夏

当時のパンフレット内でも、「ダイナミックなスポーツウォッチ」というワードが使われていますが、カラー文字盤や、スポーティなベゼルデザインなど、そのダイナミックなデザイン性で若い人のハートをわしづかみにしたということですね。

ところが、1970年代から始まったクォーツ式腕時計の本格的な普及によって、機械式腕時計であるファイブスポーツシリーズの全盛期はそれ程長くは続かず、1974年頃を最後に、機械式ムーブメント搭載モデルは新製品の投入も減って、徐々に輸出向けにシフトしていきます。結果、我々のようなコレクターが対象にするのは、概ね1969年~1974年頃に製造されたモデルが中心になります。

ファイブスポーツというシリーズ自体は現在に至るまで続いていますが、1990年代以降のモデルは、自動巻きムーブメント「Cal.7S26」を中心に海外生産、海外でのみ正規販売されており、クロノグラフ搭載モデルはラインナップから姿を消してしまいまいました。

諏訪 / 亀戸

1960年~70年代のファイブスポーツを語る上でよく出てくるのは、「諏訪」「亀戸」というワード。

この当時、服部時計店(現セイコーホールディングス)から独立した製造部門として、研究開発・設計・製造を行う「精工舎」と、精工舎のウォッチ部門が独立して創業した、「第二精工舎(亀戸工場 / 現セイコーインスツル)」、さらにその第二精工舎が立ち上げた諏訪工場と、関連会社が合併する形で設立された「諏訪精工舎(諏訪工場 / 現セイコーエプソン)」という3社が「セイコー(Seiko)」ブランドの腕時計製造を担っていました。

つまり、同じセイコーブランド、ファイブスポーツというモデルでも、製造された工場によって、諏訪モデル、亀戸モデルと分かれていたことになります。

この、諏訪、亀戸の分類は、ファイブスポーツ、およびスピードタイマーに搭載されていたムーブメントのキャリバーナンバーによって行うことができます。下記にファイブスポーツシリーズに搭載されたムーブメントの一覧をまとめます。

諏訪

  • 61系ファイブスポーツ、スピードタイマー
    • Cal.6138A(21石、21,600振動/時)
    • Cal.6138B(23石、21,600振動/時)
    • Cal.6139A(21石、21,600振動/時)
    • Cal.6139B(21石、21,600振動/時)
    • Cal.6119A(21石、21,600振動/時)
    • Cal.6119B(21石、21,600振動/時)
    • Cal.6119C(21石、21,600振動/時)

亀戸

  • 51系 / 70系ファイブスポーツ、スピードタイマー
    • Cal.5126A(23石、21,600振動/時)
    • Cal.7017A(21石、21,600振動/時)
    • Cal.7015A(21石、21,600振動/時)
    • Cal.7018A(23石、21,600振動/時)
    • Cal.7006A(21石、21,600振動/時)

このうち、亀戸工場で製造された51系は1971年頃には製造が終了し、以降は諏訪の61系、亀戸の70系が人気を二分する形で、様々なバリエーションが作られていきます。このバリエーションの多さが、ファイブスポーツをコレクションする上での面白さのひとつと言えるでしょう。

この時代のファイブスポーツ、スピードタイマーのモデル名の頭4文字は、このキャリバーナンバーと一致しますので、それをみれば、搭載されているムーブメントと、どちらの工場で製造されたかがわかるということになります。

1997年には復刻版も発売

セイコー ファイブスポーツ 復刻版カタログ

前述したとおり、1970年代前半に大人気だったファイブスポーツも、その後のクォーツ式腕時計の普及によって全盛期は終焉を迎え、シリーズとしては継続しているものの、現在では国内での正規販売が終了し、海外向けに展開されるのみになってしまいました。

そんな中、1997年に、60年代から70年代当時のデザインを復刻した「復刻版」が9モデル発売されています。ムーブメントには自動巻きムーブメント「Cal.7S36」を搭載し、1960年~70年代に人気だったデザインを組み合わせたものですが、当時のデザインをうまく復元して、なかなか良いバランスに仕上がっています。

ちなみに、私はこの復刻版についてもコレクションの対象にしていますが、それ程時間が経っていないこともあって、こちらは比較的コンディションの良い個体を見つけるのが容易です。

ファイブスポーツをコレクションするきっかけ

セイコー ファイブスポーツ(5 Sports) スピードタイマー 6138-0040 (茶馬)

私がファイブスポーツ、スピードタイマーをコレクションするようになったのは2010年頃のことですが、たまたま腕時計専門店で「6138-0040」のブラウンモデル(上写真 / 所謂、「茶馬」とか「茶ツノ」とか呼ばれるモデル)を見かけて一目惚れしたのがきっかけ。

以前、下記の記事でも書いたとおり、私が本格的に機械式腕時計にハマるようになったのは今から10年以上前、2006年とか、2007年頃ですが、実はこの当時はヴィンテージと言われるような古い腕時計にはまだほとんど興味がありませんでした。


ところが茶馬をみて、へぇこんな面白いデザインの腕時計が、しかも国産として作られていたのかと感心し、そこから徐々にこの時代のセイコー社製機械式腕時計について調べるようになりました。

で、デザイン的な面白さもあったんですが、もうひとつの理由として、ファイブスポーツシリーズが全盛だった1969年~1974年ごろっていう時代が、私自身が生まれた年代とほぼ同じ(実際には私が生まれたのはもうちょっと後で、その頃にはもう全盛期は終わってるんですけども)ということもあります。つまり今コレクションしている腕時計たちは、私より少し年上ですがほぼ同年代ってことなんです。

そんな、同年代といえるファイブスポーツシリーズですが、ロレックスやオメガなどといった高級腕時計のアンティーク、ヴィンテージ腕時計と異なり、低価格で若者向けに販売された廉価版モデルであるファイブスポーツシリーズは、丁寧に扱われることが希なので、市場に出回っている数自体は多いものの、今となってはコンディションのよい個体が非常に少なく、このまま放っておくと世の中からどんどん消えていってしまうんじゃないかという気がしたんですよね。

そう考えたら、これは自分ができる範囲で後世に残しておかなければいけないんじゃないかと、勝手に謎の使命感のようなものを感じてしまいまして。それから徐々に状態のよい個体を見つけてはコツコツ収集するようになったというわけです。

気がつけば40本を超えるコレクションに

その後、コツコツ集めてきたファイブスポーツ、スピードタイマーコレクションですが、今では40本を超えるコレクションになりました。

数的にはそれ程多いとは思いませんが、手当たり次第、とにかく全種をコンプリートするのが目的という集め方ではなく、デザイン的に自分がいいなと思ったもので、状態のよいものが見つかったときに購入するという感じで集めています。

もう概ね欲しいと思っていたモデルは収集し終わったので、今はコレクションを増やすというよりも、コンディションを保つために、オーバーホールに出したりして、保存の方に力を入れていますが、ぶっちゃけオーバーホール代金もこの数のコレクションになるとバカになりません。

私は、収集したファイブスポーツコレクションのオーバーホールを築地にある時計修理専門会社「モントル」さんにお願いしていますが、1本当たり2~3万円かかるとすると、40数本全部お願いしたら80万円から120万円以上かかる計算になります。しかも1回で、ですからね......

さすがに一気には無理なので、特に購入時にそれ以前のメンテナンス履歴が不明でコンディション的に怪しいものから優先的にお願いしていこうかなと。今のところ8本程度はオーバーホール済み。

このファイブスポーツのコレクションは、普段使いするつもりはなく、完全に保存用なので、基本的には使わないのですが、折角集めたので、ということで前述した専用サイトを立ち上げたり、Instagram の方でもたまにですが、写真を上げたりしています。

何百万円もするような希少価値のあるモデルではありませんが、今後も後世に残せるように維持していくつもり。

もし興味をお持ちの方がいれば、コレクションするにも価格が手軽ですし、それ程高価なものでもないので、ロレックスのヴィンテージのように偽物が混ざるリスクも少なく、手を出しやすいヴィンテージウォッチの分野だと思いますよ。

ちなみに、国内での正規販売はしていないと書いた現行モデルのファイブスポーツですが、並行輸入品でしたら容易に購入可能です。下記で検索してみると色々と出てくると思います。

「セイコー ファイブ」を楽天市場で検索

「セイコー ファイブ」をAmazonで検索

あわせて読みたい